調査データから
生活者とCSR・環境問題をめぐる現状
――2009年都市生活者Web調査(6)「CSR・環境問題」


読売新聞が2009年9月に実施した「都市生活者Web調査」の結果から、生活者とCSR・環境問題をめぐる現状について考えます。調査結果からは、「CSR」の認知・理解については経営者層では一定レベルで進む一方、一般生活者では減退していること、また一般化したと考えられる環境意識については、データ上は沈静化していることなどがうかがえます



① 「CSR」・・・言葉の意味まで知っている人は8.5%


図1 「CSR」の認知度(2009年)

「CSR」を意味まで含めて知っている人は全体では8.5%。男性は13.4%が知っているが、女性では3.3%に過ぎない。性年代別に見ると、企業の要職についている人が多いと思われる50代男性が最もスコアが高く18.3%。「CSR」の認知は属性によってかなり差が見られる。


② 「CSR」の認知度は過去3年間で最低


図2 「CSR」の認知度 3年間の推移

過去3年間の同調査の結果と比較すると、「CSR」の認知は下がり続けていることが分かる。企業のあり方を表現する新しい概念として注目された言葉であるが、広がりは見せていない。


③ 「CSR」は企業の経営に携わる人の中では、ある程度認知されている


図3 「CSR」の認知度 3年間の推移(属性別)

認知度の推移を属性別に見てみると、企業・団体の役員クラスレベルでは、「意味まで知っている」人のスコアが07年から08年で上昇し、09年のスコアも落ちていない。それに比べ、部長クラスや役職のない人では、年々認知度が下がっている。「学生」「主婦」のスコアも併記したが、同じく年々認知度は下がっている。2009年では主婦の86%が「CSR」の言葉自体も知らないと回答している。この結果から、「CSR」というワード・概念は、経営にたずさわる人の中ではある程度は認知されているが、一般では忘れられつつあるといえる。その一因として、2008年7月の洞爺湖サミット前後には、多くの企業が「環境問題」を軸にCSRに関わるコミュニケーションに力を入れていたが、その後は継続的に情報発信を行う企業が減ったことが考えられよう。CSRに関わるコミュニケーションは、継続して行わなければ、その効果は得られないと言える。


④ 企業に最も優先して欲しい活動は「コンプライアンス(法令遵守)」

次に、「CSR」の説明と、その活動が「法令遵守、情報開示から環境保護、社会貢献といった活動まで、企業が社会に対して責任を果たしていく活動であること」を明記した上で、企業に対して優先して欲しいと思う活動を1位から3位まで順番をつけて選んでもらった。

表1 企業に優先して欲しいこと(2009年)

全体の3割が「コンプライアンス」を最優先してほしい活動に挙げている。次点には「人権・労働問題」(26.6%)が入っており、不況の影響下にあることが感じられる。


⑤ 3年前よりもスコアが上昇・・・「人権・労働問題」「利益を上げ、税金を納入すること」

次に同様の調査の3年間のスコアの推移を見てみる。

表2 企業に優先して欲しいこと 3年間の推移

2007年と2009年を比べると、「人権・労働問題」を1位に上げた人の割合は14.4%→26.6%と約12ポイント上昇している。また、「コンプライアンス」「環境保護」のスコアが低下する一方で、「利益を上げ、税金を納入すること」を1位に上げた人の割合も4ポイント程度であるが上昇している。これらも景気後退の影響であると考えられる。


⑥ 企業の環境コミュニケーション・・・「わからない・判断できない」のスコアが伸長

「CSR」のワードと概念は世間一般では忘れられつつあることがわかった。一方で、企業の環境コミュニケーションは生活者に届いているだろうか。3年間の推移で見たグラフが以下である。

図4 環境に関する企業の取り組みの現状をその程度知っていると思うか(3年間推移)

「認知層(よく知っている+まあ)」の推移は3年間で19.4%→22.1%→20.2%、また「非認知層(あまり知らない+まったく知らない)」は3年間で65.7%→65.5%→62.0%。2008年には洞爺湖サミットがあったため、多くの企業が環境コミュニケーションに取り組んだが、その成果か2008年の認知層スコアは若干上昇しているものの、大きな変動はない。その一方で「わからない・判断できない」は昨年の12.6%か17.9%と5ポイント以上上昇した。

図5 企業の環境への取り組みの評価(3年間推移)

同様に、「企業の環境への取り組みの評価」については、2009年では「企業による差が大きい」(56.9%)が2008年よりも10ポイント以上減った一方で、やはり図4での結果と同様にここでも「わからない・判断できない」のスコアが約7ポイント上昇している。企業の「環境への取り組み」の広まりを感じている生活者が増えてはいる。しかし同時に「分からない・判断できない」のスコアの上昇から推測されるのは、企業からのメッセージが減少したことで、何をもとにして企業の取り組みを判断していいか分からなくなっている生活者も増えているということではないだろうか。

図6 環境問題に積極的に取り組む企業には好感が持てる(3年間推移)

3年間の推移を見ると、「あてはまる」は減少し続けている。環境問題に積極的に取り組むことが、即「好感度」の上昇につながるわけではなくなった。生活者は、今や企業が「環境問題」に取り組むのは当然のことだと感じ始めている、と言える。


⑦ 生活者の環境への取り組み・・・「積極層」は減少、「留保層」が増加

次に生活者自身の環境への意識についてみてみる。

図7 ふだんの生活の中で環境を保護する行動を行っているか(3年間推移)

「行動をとっているが、まだもっと増やしたい」という「積極層」は、2008年と2009年を比較すると12.9ポイント減少した。逆に「行動はとっていないが、どんな行動があるかわかれば取りたい」という「留保層」は7ポイント増加している。「現状の行動で十分」という「現状維持層」は昨年とほぼ同じスコア。生活者による環境保護の行動の盛り上がりは落ち着きを見せ、本当に環境保護のために実効性のある行動とは何か、を模索し始めたと考えられる。

図8 身近な環境行動ですでに行っているもの(2009年)

具体的な行動ですでに行っているものでは、「新聞雑誌の回収」「ゴミの分別」はすでに常識レベル。また上位には、「こまめに電気を消す」「シャワーを出しっぱなしにしない」「カーテンで室温調節をする」など電気・ガス会社などの啓発広告でおなじみの行動が並ぶ。長年の啓発の効果が表れている。
逆に「車はハイブリッドカーを選ぶ」や「車の燃料はクリーンエネルギーを選ぶ」は、まだ上級者編の行動といえよう。また、数年前からよく耳にする「マイ箸」も6.3%となかなか広まっていないようだ。

表3 2008年と比較してスコアが上昇した行動(上位10項目)

1年前と比較して、2009年にスコアが上昇している行動のトップは「食べる時期に合わせて、適正な賞味期限の食品を買う」。これは、食品の大量破棄が社会的に問題になったことの影響も考えられるが、賞味期限の近い食品は、たいてい割引がなされており、環境にもお財布にもエコであることが行動に結びついたとはいえないか。同様に「マイバッグ」についても、最近はマイバッグ持参でポイントをつけてくれる店も増えているし、レジ袋を有料にする自治体も相次いでいる。また「野菜は地元のものを買う」についても、購入金額は遠距離を運ばれたものより安いことが多い。つまり、第一義的に「お得」であり、結果としてエコにもつながることが生活者にとって実践のポイントとなっていると考えられる。

表4 現在は行っていないが、今後行いたい行動(上位10項目)

「今後行いたい行動」には、ハイブリッドカー、クリーンエネルギー、蛍光ランプやLEDランプへのスイッチが上位に並んでいる。新しいテクノロジーを生活に取り入れたいと考えている人たちが多くいる様子がうかがえる。また「マイ箸」は現状では実践している人は少ないが、4割の人が行いたいと考えている。これは、行動にあたって、投資が必要なものではないので、何らかのきっかけがあれば、大きく広がるかもしれない。
■過半数が新聞から環境に関する情報を得ている

図9 環境についての情報源(複数回答)

複数回答で、環境についての情報源を聞いたところ、全体の52.5%が「新聞」と回答、テレビ(74.4%)に次ぐ情報源であると認識されている。

■読売新聞は、環境に配慮した企業や店舗・商品に関する情報に関心がある層に届いています

図10 環境に配慮した企業や店舗・商品に関する情報に関心がある人への購読新聞到達率(n=1369)


(吉池)
調査概要 2009年都市生活者Web調査

調査期間 2009年9月2日~18日
調査地域 1都8県(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県)
調査対象 満18~69歳の男女個人
設定サンプル数 2000
サンプリング インターネット調査パネルを基にした割当法(性・年代別)
調査方法 インターネット調査
調査企画・設計 読売新聞東京本社
レターヘッド・実査 NTTビジュアル通信(株)

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