新聞・テレビのクロスメディア接触がマインドシェア向上に影響
インパクト・スコア分析
商品ジャンル別クロスメディア効果測定②
「よみラボ」ではクロスメディアを意識した広告接触効果についての実験的調査を実施した。媒体間でフラットに広告の効果を比較できる指標として導入した「インパクト・スコア」を見ると、商品ジャンルによって媒体力の違いが表れた。前回は、パソコン、ビール/発泡酒でのインパクト・スコアをご紹介したが、今回は銀行についてブランド別の事例とともに紹介する。
調査結果1
インパクト・スコアが多いほどマインドシェアが上がった実例
―銀行広告事例でクロスメディア接触効果を見る―。今回は銀行広告についての分析結果をご報告する。
「よみラボ」では、「この調査で日記に書き込まれた広告の件数を、企業・ブランド名まで記憶して書くことのできたインパクトのある広告接触」という意味で「
インパクト・スコア」と名付けた。
このインパクト・スコアをもとに、日記式調査の前後に実施した調査結果と合わせ、ブランド別イメージ変化などを分析した。
今回は、全銀行広告のインパクト・スコアから見てみよう(図1)。これを見ると、新聞が最も広告接触認識が高い。テレビを2倍以上引き離している。前回ご紹介したパソコンとともに銀行は、新聞が強い力を発揮している。
図1:銀行広告のインパクト・スコア

今回の調査では、Webのスコアが想像以上に低かった。「見た広告のブランド名を書く」という設問が、広告とそうでない部分の境があいまいなWebでの情報収集の実態に合っていなかったのかもしれない。
クロスメディアにおけるWebは、広告効果を測るツールであるという考え方もあり、広告に限定せずWebというメディア全体で接触実態をきちんと測ることは重要だと考えている。次回調査では、Webの特徴を踏まえて、他の媒体とは別立ての設問とするなどの方策を検討したい。
次に、ブランド別に
集計したインパクト・スコアから一例を紹介する。
図2は、三菱東京UFJ銀行の日別インパクト・スコアである。2月16日・20日・22日に「新聞広告」のスコアが突出している。
図2:「三菱東京UFJ銀行」日別インパクト・スコア

掲載紙面

2月16日付 朝刊掲載

2月22日付 朝刊掲載
16日と22日には、三菱東京UFJ銀行がシリーズで掲載している企業広告(全15段多色)の第1回と第2回が読売新聞に掲載されている。シリーズ広告接触の累積効果で、16日より22日のスコアが多くなっているのではないかと推測される。
20日は三菱東京UFJ銀行がメインの広告はなかったが、関連会社の商品広告(全15段多色)の中に三菱東京UFJ銀行名が記載されていた。新聞に次いで「店頭広告」のポイントが高いが、休業日である土日は低く、平日が高くなっている。
図3は、日記式調査対象者に3週間後に実施した事後調査における「三菱東京UFJ銀行」名のトップ・オブ・マインド(純粋想起第一位率)を、インパクト・スコア別に見たものである。
図3:銀行名「三菱東京UFJ銀行」純粋想起第1位率(インパクト・スコア別)

インパクト・スコア数が増えるほど、三菱東京UFJ銀行を最初に想起する割合が増えており、広告接触がマインドシェア向上に影響しているといえそうだ。
図4はすべての想起率だが、インパクト・スコアに関係なく高率である。三菱東京UFJ銀行は誰でもが知っているので、何番目に想起したかを問わなければ必ず名前が挙がる。しかしマインドシェアを高めるには頻繁な広告接触が有効だということである。
図4:銀行名「三菱東京UFJ銀行」純粋想起全再生率(インパクト・スコア別)

図5は同じくトップ・オブ・マインドについて、インパクト・スコアの中で新聞とテレビの2つの媒体に注目してクロスパターン別に見たものだ。新聞のみ、テレビのみよりも、両方に接触した方がトップ・オブ・マインドは高くなる。異なる媒体で広告に接触すると相乗効果が生まれ、印象も強くなる。
図5:銀行名「三菱東京UFJ銀行」純粋想起第1位率
(新聞・テレビ/クロス・パターン別)

図6、図7は、三菱東京UFJ銀行の信頼度・好感度で、テレビよりは新聞、新聞だけよりは新聞・テレビ両方への接触・認識者で「非常に…」のスコアが多いことがわかる。広告を見た銀行名の純粋想起で三菱東京UFJ銀行が1位に想起された割合(図8)ではテレビ接触者のスコアが多い。
図6:三菱東京UFJ銀行信頼度(新聞・テレビ/クロス・パターン別)

図7:三菱東京UFJ銀行好感度(新聞・テレビ/クロス・パターン別)

図8:広告を見た銀行名「三菱東京UFJ銀行」純粋想起第1位率(新聞・テレビ/クロス・パターン別)

このことから推察されるのは、「広告を見た」というレベルではクリエイティブの印象が強いテレビが強く出るが、より純粋なマインドシェアである単純な銀行名想起では新聞が力を発揮するということである。
新聞、テレビ、店頭広告というインパクト・スコア上位3つでもクロスパターンを軸に集計し、
3媒体でのクロスメディア分析にトライしてみた(図9、図10)。
タイプによってはサンプル数が少なくなってしまったので参考程度に見ていただきたいが、やはり1つの媒体より複数の媒体に接触・認識した人の方が、トップ・オブ・マインドが高くなるという傾向が出ていることがおわかりいただけるだろう。
図9:銀行名「三菱東京UFJ銀行」純粋想起第1位率(新聞・テレビ・店頭/クロス・パターン別)

図10:広告を見た銀行名「三菱東京UFJ銀行」純粋想起第1位率
(新聞・テレビ・店頭/クロス・パターン別)

調査結果2
インパクト・スコア数が銀行の企業イメージに影響
三菱東京UFJ銀行の企業イメージにインパクト・スコアが影響を与えていることも分かった。
三菱東京UFJ銀行の企業イメージについて聞いた24項目のデータと、インパクト・スコアの合計数を
コレスポンデンス分析にかけた(図11)。これによると、インパクト・スコアが増えるほど、いろいろなイメージに近く、広告接触の認知回数の多さが、企業イメージに影響しているようだ。
図11:インパクト・スコア別「三菱東京UFJ銀行」イメージ
(コレスポンデンス分析)

図11は、わかりやすいようにインパクト・スコアが少ないほうを青枠で、多いほうを赤枠で囲んである。さらに、0ポイントから合計5ポイント以上までを矢印でつなぎ、その流れも分かるようにしている。
この分析法では、インパクト・スコアとイメージ項目の位置を見ることによって、その関係を知ることができる。これを見ると、
ポイントが増えるにつれ、さまざまなイメージが密接したエリアへ動いていくことがわかる。
0ポイントや合計1ポイントと近い「規模が大きい」、「世の中に貢献している」イメージは、広告接触の認知に関係なく三菱東京UFJ銀行が持っているイメージといえる。
合計2ポイントと近いのは、「誠実な」「広告が印象的である」「家族や知人の間で評判がよい」といったイメージである。合計3ポイントは「先進的」「お客様への対応が丁寧」、合計4ポイントでは「新しいサービスを提供している」「就職したい(させたい)」、合計5ポイント以上では「まじめな」「知的な」といったイメージと近い。これらは、広告接触の認知によって影響を受けたイメージということになる。
これらのイメージの中でも特徴的な「広告が印象的である」「誠実な」「就職したい(させたい企業である)」の3つのイメージに注目してみたい。この3つのイメージをインパクト・スコア別と新聞とテレビのクロスパターン別に見ていく。
それによると、三菱東京UFJ銀行の3つの企業イメージは、ともにインパクト・スコアが増えるほど高くなっている(図12、図13、図14)。
図12:インパクト・スコア別「三菱東京UFJ銀行」イメージ
(広告が印象的である)

図13:インパクト・スコア別「三菱東京UFJ銀行」イメージ(誠実な)

図14:インパクト・スコア別「三菱東京UFJ銀行」イメージ
(就職したい/させたい企業である)

新聞・テレビのクロスパターン別(図15、図16、図17)では、「誠実な」と「就職したい(させたい)企業である」が、両方の媒体で広告を接触・認識した人ほど高くなっている。
この間に接触で認知した三菱東京UFJ銀行の広告は「誠実な」「就職したい(就職させたい)企業である」というイメージを促進させている。
ただし、「広告が印象的である」だけは、テレビでの影響が強い様子が伺える。映像や音声のあるテレビCMは、印象という点ではインパクトを残すのだろう。
図15:クロス・パターン別「三菱東京UFJ銀行」イメージ(広告が印象的である)

図16:クロス・パターン別「三菱東京UFJ銀行」イメージ(誠実な)

図17:クロス・パターン別「三菱東京UFJ銀行」イメージ
(就職したい/させたい企業である)

最後に日記式調査を受けたことによる事後調査での調査バイアスについても簡単に触れておきたい。表1は、2系列(日記式調査実施者と非実施者)の事後調査のデータ比較である。広告で見た銀行名を純粋想起する設問などで日記式調査を受けた人の方が想起率が高く、その比率には有意な差があると言える。
これは、広告接触したブランド名を日記に書いたことによって記憶が押し上げられていることを示している。日記式調査を受けたことのバイアスが事後調査に出るのを避けるため、記憶の沈静期間として3週間おいたが、調査設計時のその仮説が正しくなかったわけである。
しかし逆に言えば、広告に接触した体験を何らかの行為によって追認させることができれば、少なくとも3週間後もその効果が持続する、ということである。これはこれで、広告効果を高めるためのヒントになるはずだ。
表1:日記式調査対象者系列と非対象者系列の事後調査スコア比較

[2] ★よみラボ担当者より★:Re:新しい手法ではありますが、母数は・・・
2006-6-15 9:31:25
ご指摘ごもっともです。日記式の部分の調査対象者の負担が大きく、謝礼など調査予算にはねかえるため、今回はこのサンプル数が精一杯でした。初の試みの結果、調査手法が成立することがわかりましたので、次回は自信を持って、もう少しサンプル数を増やしたいと考えています。
もしこのサイトをお読みの方で、上記の本のことに限らず詳しい方がいらっしゃいましたら、こちらへの書き込みで教えていただけると幸いです。
[1] 新しい手法ではありますが、母数は・・・
2006-6-14 9:5:45
大学で広告について学んでいる学生です。
この調査方法は、初めて知りました。ひょっとしたら、これまでなかった新しい方法かとは思いますが、調査に協力してもらった人の数が、少ないのではないかと気になりました。信頼性について、どうお考えでしょうか。