携帯電話のブランドロイヤルティを高める新聞広告
ポイントを絞った分かりやすい広告がロイヤルティを高める

1972年生まれ。97年早稲田大学商学部卒業。2002年同大学大学院博士後期課程修了。早稲田大学産業経営研究所助手、東京富士大学経営学部専任講師を経て、05年より現職。広告論担当。著書に『エッセンスで読むコトラーのマーケティング 入門の入門』(あさ出版)、『新しい広告』(電通、共著)、訳書に『経験価値マーケティング』『経験価値マネジメント』(ダイヤモンド社、共訳)などがある。
今回の調査は、携帯電話番号ポータビリティ(MNP)の意識や実際の契約者数とMNP導入時に展開された広告への意識を調べています。MNPはニュースでも盛んに取り上げられましたし、携帯各社が盛んに広告を展開していたので結果が注目されます。
MNPへの関心は、開始1か月前から高まっており、認知度は9割近くになっています(図2)。その一方で、MNPへの興味関心、キャリア変更意向は導入時から徐々に減少していることがわかります(図3、4)。導入時にまで関連した広告やニュースが多かったので、実際にキャリアを変更しようと強く意識していた人は、MNPが導入されてから早い時期に済ませてしまった人が多かったのではないでしょうか。
MNPの長所としては、通話料金に関する項目を挙げる人が多いことがわかります(図7)。短所としては、メールアドレスの変更、契約手数料がかかる、長期割引の特典がなくなるといった点が挙げられています。短所については、携帯各社も強く主張しにくいので、ニュースや店舗に行ってみて分かったという人もいるのではないでしょうか。
携帯電話についての関心度については、各社が料金プランの見直しなどを行い、集中的なキャンペーンが行われた結果、料金・割引プランへの関心が高まっているのがよく分かります。
キャリア3社に対する信頼度ではドコモが高い信頼を得ているのですが、実際には転出が転入を大きく上回る結果になりました。元々、契約者数が他社に比べて最も多かったこともあり、ある程度の転出は仕方がなかったと思います。加えて、他社の提案した家族などを取り込む割引プランを提出した影響も大きかったのではないでしょうか。
家族割引が導入されてから、家族でキャリアを揃える世帯が増えてきたと思います。たとえ本人がドコモにロイヤリティがあったとしても、家族として料金を抑えられるプランがあれば他社への変更も仕方のないことと考えるかもしれません。
広告の内容別に見てみると、割引プランや新機種の告知を取り上げた広告に対して、変更意向が消滅した人の意識が高かったのではないかと思わせる結果となっています(図18、19、20)。
MNPとは直接関係ないかもしれませんが、広告の大きさによる記憶度合の違いも気になりました。一般に広告のサイズが大きくなると注目率も高くなるといわれています。「らくらくホン」「ユネスコキッズ」は他の全面広告に比べて記憶度合が低いのですが、「国際サービス」は注目率が相対的に高い結果が出ています(図17、21、22)。この結果が携帯電話へのニーズによるものなのか、記事の面と関連しているのかは広告の効果を考える上で興味深いと思います。
今回の調査は、MNP導入時という非常に激しく市場が動く環境下で行われたキャンペーンを対象に行われています。携帯電話ユーザー全体から見れば、キャリアを変更した人は多くはないものの(図6)、MNPの導入によって市場がより流動的になったことは間違いありません。
また、MNP導入時の広告をめぐっては、携帯電話の広告のわかりにくさも問題になりました。シェアの争奪戦が激しくなる中で各社が次々に新しい展開をしてくると、消費者が混乱してしまうことも考えられます。今回の調査でキャリアの消滅意向が高かった人が注目した広告は、新しい携帯電話端末の告知広告でした(図20)。ロイヤルティを高めるためには、何よりもポイントを絞った分かりやすさが重要なのかもしれません。