携帯電話のブランドロイヤルティを高める新聞広告
携帯ユーザーの意識の変化をリアルタイムでつかむ



1955年東京都生まれ。78年早稲田大学商学部卒業。88年同大学院商学研究科博士後期過程単位取得。埼玉女子短期大学専任講師、助教授を経て、93年早稲田大学専任講師、95年助教授、2001年より現職。主な著書に、「新しい広告」(電通、監修)、「現代広告論」(有斐閣、共著)、訳書に「経験価値マーケティング」「経験価値マネジメント」(ダイヤモンド社、共訳)などがある。

今回の調査は、ナンバーポータビリティ開始前と開始後数か月の間に、携帯ユーザーのナンバーポータビリティそのものについての理解がどのように深まっていったか、またキャリア変更意向がどのように変化したのか(しなかったのか)、ということがリアルタイムでつかめている点が興味深いと思いました。

9月の調査ではナンバーポータビリティの「詳しい内容まで知っている」という人は全体の4分の1強だったのに、2か月後にはそれが10ポイント近く高い数字になっています(図2)。

一方、興味関心度(とても興味関心ありとやや興味関心ありを足したもの)は9月が一番高かったというのもおもしろいですね(図3)。メディアの報道や広告で盛んに登場する言葉にはとりあえず興味を持つが、あまり自分と関係ないと思うと興味を失う人も多いのかもしれません。熱しやすく冷めやすいのが現代人の特徴かと思わせるような部分です。結果として、「キャリア変更の意向はない」が毎月増えているのも象徴的です(図4)。

いくら携帯ユーザーの意識調査として興味深いとはいえ、ここは「よみラボ」なので、広告との関係がどうなっているのかを知ることが重要です。携帯電話では当初からシェアナンバーワンのドコモですが、ナンバーポータビリティで料金や新機能を前面に戦いを仕掛ける他社にユーザーが流れてしまうのを抑えるという難しい課題を抱えていました。

この調査でも、「信頼できる」「伝統的な」「規模が大きい」といった形でドコモへのユーザーの評価は高いようですので(図14)、ロイヤルティも高そうに思えます。ただ一口にロイヤルティといっても、積極的なロイヤルティと惰性的・消極的なロイヤルティ(いわば見せかけのロイヤルティ)があります。絶対にドコモから他キャリアへは移りたくないという積極的なロイヤルティをもつユーザーばかりだと考えては楽観的すぎるでしょう。

調査結果3では、キャリア変更に対する意向のタイプ別に広告接触数を見ています。12月に出稿された7種類の広告は、国際サービス、ネットワーク品質、ファミリー割引などそれぞれ訴求ポイントが違っています。結果として、キャリア変更意向のある人のほうがない人より新聞広告への反応数が多く、キャリア変更を思いとどまった人は「新機種の告知」や「料金サービス」といった告知に反応しているということですが、新聞広告への接触が変更への意向に影響するのか、変更への意向が広告の見方に影響するのかといった因果関係はこれだけでは推測しにくいように思います。

ロイヤルティ(積極的なロイヤルティ、消極的なロイヤルティともに)をもってドコモを使っているユーザーは、12月の広告では自らのロイヤルティを確認できる広告に出会わなかったかもしれませんね。

実際に4月に発表されたデータを見ると、残念ながらドコモは7か月連続で他キャリアへの転出が転入を超えているということでした。4月の後半から、今までのドコモとはかなり違ったトーンの広告が始まっていて、今後が注目されます。広告で影響を受けやすい若い人たちに焦点を絞っての展開のように見えますが、従来からの消極的なロイヤルティを持っていた人たちが離れてしまわないような気遣いも必要かもしれません。

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