ブランド力強化とイメージ定着に効果をもたらした三ツ矢サイダーのシリーズ広告
誰でもよく知っている商品の広告



1955年東京都生まれ。78年早稲田大学商学部卒業。88年同大学院商学研究科博士後期過程単位取得。埼玉女子短期大学専任講師、助教授を経て、93年早稲田大学専任講師、95年助教授、2001年より現職。主な著書に、「新しい広告」(電通、監修)、「現代広告論」(有斐閣、共著)、訳書に「経験価値マーケティング」「経験価値マネジメント」(ダイヤモンド社、共訳)などがある。

ほとんどの人がその商品名(ブランド名)を知っていて、どのような商品かも知っている。そして、誰もが食べたり、飲んだり、使ったりしたことがある。三ツ矢サイダーはまさにそういった商品です。全くの新製品であれば名前も、商品の特徴も知られていないので、広告することで少しでも親しみを持ってもらい、試しに使ってもらいたいということにもなりますが、みんながすでに知っている商品を広告する意味とはいったいなんでしょうか。実はこれは広告の古くて新しいテーマでもあります。

飲料業界は競争が激烈で、毎年新しいブランドがいくつも登場しては、あっという間に消えてしまうことで有名です。だから、長い間生き残っているブランドはそれだけでも強いブランドと言えることは確かでしょう。新しいブランドが行う広告と、昔からあるブランドが行う広告が同じ目的を持っているわけではありません。

今年の夏はいつにもまして暑かったような気がしますが、のどごしさわやかな炭酸飲料がおいしいのはやはり暑いときです。今回の三ツ矢サイダーの広告は、季節がこれから夏に向かうという時期に6週間連続で出稿されています。全2段で緑色をバックに白抜きの文字とイラスト、そしておなじみの三ツ矢の赤いマークとボトルがレイアウトされ、それほど大きなスペースではないものの、他の記事からは目立つように工夫されています。

広告で語られているのは、三ツ矢サイダーが「今年で123周年」を迎えること、「丁寧なモノ作りで安心と信頼のブランドを築いて」きたこと、これからも「水に、香りに、さらなる磨きをかけてピュアなおいしさをお届け」するという宣言で、回によっては宮沢賢治や夏目漱石が登場したり、CMソングの話が出てきたり、三ツ矢という名前の由来が出てきたりと読者の興味を引きます。

昨日今日生まれたブランドではどう頑張っても語れない歴史の重み、愛され続けてきた事実を毎週あえて掲載することで、三ツ矢サイダーにロイヤルティの高い人に、「そろそろ夏ですね。あなたの夏にはやっぱり三ツ矢サイダーですよね」と思い出させる効果が期待できます。すでに知っているブランドであっても、時々はこうした刺激をすることが重要で、これがないと他の多くのブランドからの刺激がロイヤルユーザーにも降り注いでしまうことになります。図2を見ると、回答者は別の人ではありますが、広告出稿前と比べると出稿後に純粋銘柄想起が高くなり、他の炭酸飲料をしのいでいることがわかります。

テレビでは人気のタレントを使って、中学生、高校生をメインターゲットとしたコマーシャルが放送されており、こちらも強く記憶されているようですが、図3では、事後に三ツ矢サイダーの新聞広告を見たといっている人が急激に増えていることもわかります。

世代を超えて飲用される三ツ矢サイダーだからこそ、テレビコマーシャルとはひと味違った新聞広告の意味があったように思われます。新聞広告を見たことによって三ツ矢サイダーへの信頼度や好感度が高まっているようにも見えますが、実際には、三ツ矢サイダーファンが喜んで読んでくれた広告だったのではないかと思います。新規のユーザーだけでなく、昔からのユーザーを大事にする三ツ矢サイダーというイメージも生まれているのではないでしょうか。

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