研究レポート
携帯電話のブランドロイヤルティを高める新聞広告
ナンバーポータビリティへの意識と新聞広告の関係

2006年10月24日にスタートした携帯電話の番号持ち運び制度(ナンバーポータビリティ)。読売新聞では、携帯ユーザーのナンバーポータビリティへの意識と新聞広告の関係を分析するための調査を2006年9月から2007年1月まで、各300人に対して計4回の調査を行った。調査バイアスを防ぐため、毎回フレッシュな調査対象者としている。
また、9月時点のナンバーポータビリティ利用意識が実行に移されたかどうかを見るため、9月の調査対象者への追跡調査も別途行った。
レポートの前半は、4回の調査結果を元にナンバーポータビリティ意識の月別変遷、後半は追跡調査を元にキャリア変更意向変化と新聞広告の関係を分析した。

監修者・嶋村先生のコメント

監修者・広瀬先生のコメント
調査結果1
ナンバーポータビリティへの関心・利用意向は漸減

調査は、2006年9月末、10月末、11月末、2007年1月中旬の計4回行われた。この調査では、ナンバーポータビリティの認知は上昇したものの興味は下降している。また、キャリアを変更した人は少数にとどまった。メリットとしては、割安料金や魅力的なサービスの会社に変更しやすいといったことが高いポイントを得た。デメリットは、メールアドレスの変更や契約手数料がかかるという内容が多い。携帯電話キャリアの信頼度は3社のうちNTTドコモがトップだった。

まず、調査対象者の使用キャリアは図1のようになっている。各回の調査対象者はまったく別々の人たちであり、キャリアごとのポイントの上下は、キャリアの変更を意味するものではない。

図1:現在使用中のキャリア


ナンバーポータビリティの認知(図2)は、9月の段階で、「詳しい内容まで知っている」が27.3%、「大体の内容を知っている」が60.7%で、合わせて9割近くの人が、開始約1か月前の段階で認知していた。開始後の10月の調査時には認知者が少し増加して、知らない人は5%弱のみとなり、11月、1月はその水準がキープされた。

図2:ナンバーポータビリティの認知状況


一方、ナンバーポータビリティへの興味関心度(図3)は対照的で、開始前の9月が5割強で最も高く、それ以降徐々に下がっている。開始以前にナンバーポータビリティ利用の新規契約予約を受け付けていたキャリアもあったとはいえ、前評判倒れの面があったことは否めない。

図3:ナンバーポータビリティへの興味関心度


サービスが始まったら、ナンバーポータビリティを利用してキャリア変更したいと思うか(図4)を見ると、9月をピークに徐々に下がっており、先ほど見た興味関心度と同様の傾向である。特に「現在検討中」の人が29.0%から19.3%へ約10ポイントも減少しており、話題になっているナンバーポータビリティについて検討しようと思ったものの、だんだんと意欲が薄れていく様子が表れている。

図4:ナンバーポータビリティ開始後のキャリア変更意向度


検討中の人も含めたキャリア変更意向者に、その時期について聞いたところ(図5)、「1か月以内」が1月にやや増えている。「1か月以内」が増えたのは、少数ながらもナンバーポータビリティを利用する堅い意志を持っている人が、着々と実行に移そうとしていることを示しているだろう。

図5:ナンバーポータビリティ開始後のキャリア変更時期


1か月間に実際にキャリア変更をしたかどうか(図6)を見ると、5%以下の非常に低いスコアとなっている。

図6:最近1か月のキャリア変更状況


ナンバーポータビリティの長所(図7)としては、「通話料金が割安な会社に契約変更できる」「魅力的なサービスや機能の会社に変更できる」などが高いポイントを得た。この上位2つは、4回の調査の中ではサービス開始直後の10月がピークになっている。

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図7:ナンバーポータビリティの長所


対して「パケット料金が割安な会社に契約変更できる」「魅力的な携帯端末がある会社に契約変更できる」「家族と同じ会社に変更し料金割引を受ける」などは11月や1月のほうが高めになっている。

メリットとして、報道や広告で大きくうたわれている上位2項目については開始と同時の10月に認知したが、時期を経たことで、メリットがディテールに及んでいったと思われる。

デメリット(図8)は、「メールアドレスが変わる」「契約変更に手数料がかかる」「長期割引の特典がなくなる」が3大項目となった。メリットの上位項目は10月がピークだったのに対し、デメリットの上位項目は11月がピークとなっている。デメリットの認知は、メリットよりも遅れてくるようだ。メリット同様、時期を経ることで、内容も詳しくなっていったと思われる。

図8:ナンバーポータビリティの短所


携帯電話についての一般的関心度(図9)は、ナンバーポータビリティへの関心と同じく、9月がもっとも高く、以降は減少傾向にある。関心を持っている人のの関心内容(図10)を見ると、「料金・割引プラン」が10月に9月のほぼ3倍増となっている。これは、ソフトバンクが10月23日に発表した「予想外割」の影響だと思われる。

図9:携帯電話への一般関心度


図10:携帯電話に対して注意したり、関心を持っていること


キャリア3社に対する信頼度(図11)は、NTTドコモが3社のうちで最も高い。月別の推移で見るとソフトバンク(9月まではボーダフォン)が、10月に大きく下げ、その後11月、1月も減少気味であることが目を引く。

図11:キャリア各社の信頼度


10月に大きくスコアを落としたのは、ナンバーポータビリティ開始直後に、申し込み数にシステムが対応できず業務停止に陥るなどのトラブル、またその後も割引制度の分かりにくさのため公取から警告を受けるなどした影響と見てよいだろう。

NTTドコモとauは10月にやや下降したものが1月に元に戻っており、同じ傾向である。これは、ナンバーポータビリティの開始やソフトバンクの問題で、ユーザーに動揺を与えたが、3か月ほどたって落ち着いた、と見ることができるのではないだろうか。
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調査結果2
ドコモユーザーのキャリア変更意向状況

王者NTTドコモにとっては、攻撃(他キャリアから流入させる)よりも防御(ドコモユーザーの囲い込み)を確実にしたほうが、ユーザー絶対数を維持することにつながるはずである。そこで、後半ではドコモユーザーをキャリア変更意向別にタイプ分けし、ドコモから他キャリアへの変更意向を消滅させるのに効いた、つまりブランドロイヤルティを高めたのはどんな新聞広告だったのか、という視点での分析を試みた。
その結果、2006年9月から2007年1月でキャリア変更意向者は減少し、キャリア変更を思いとどまらせるには、口コミの評判や広告での印象付けが功を奏しそうなことが分かった。

2006年9月の調査対象者に対する追跡調査を2007年1月に行った。つまり、9月時点でキャリア変更意向を持っていた人が4か月後に本当に変更をしたのか、確認するわけである。9月の対象者300人のうち、1月の追跡調査では236人から回答を得た。
まず、9月→1月のキャリア変更意向変化に応じて、以下のような5グループに分けた。
①変更意向維持=9月も1月もキャリア変更意向あり
②変更意向発生=9月にはキャリア変更意向がなかったが、1月はある
③変更意向消滅=9月にはキャリア変更意向があったが、1月はなくなった
④もともとなし=9月も1月もキャリア変更意向なし
⑤キャリア変更=9月から1月までの間にキャリア変更した

キャリア別のグループ構成(図12)を見ると、ドコモユーザーでは23.6%が「変更意向維持」、5.5%が「変更意向発生」で、合わせて3割弱が他キャリアへの変更を阻止しなければならない要注意グループということになる。「変更意向消滅」が15.7%、「もともとなし」が55.1%で、7割強が心配ないグループ。

図12:2006年9月~2007年1月のキャリア変更意向変化


1月に3割弱いる要注意グループは、9月の時点では約4割(「維持」+「消滅」)だったので、9月から1月の間に減少している。

ナンバーポータビリティへの興味関心(図13)は、ドコモユーザー全体では興味関心のある人の割合は少し減った程度だが、タイプ別に見ると、「変更意向消滅」者で「とても興味関心がある」がいなくなっている。

図13:ドコモユーザのナンバーポータビリティ興味関心度


ドコモユーザーのドコモイメージ項目を9月と1月で比較すると(図14)、5ポイント以上増えたのは「まじめな」「新しいサービスを提供している」「便利なサービスを提供している」「お客様への対応が丁寧」。

図14:NTTドコモのイメージ


次に、キャリア変更タイプ別に見た9月と1月の増減(表1)の中から、変更意向消滅者に注目して見ると、1月に上がったイメージは「新しいサービスを提供している」(+27.8ポイント)、「伝統的」(+16.7ポイント)、「融通のきく」(+16.6ポイント)、「家族や知人の間で評判がよい」(+11.1ポイント)、「お客様への対応が丁寧」(+5.6ポイント)、「広告が印象的である」(+5.5ポイント)、「子供にやさしい」(+5.5ポイント)などだった。キャリア変更を思いとどまらせるには、口コミの評判や広告での印象付けが功を奏しそうである。

表1:キャリア変更意向別2006年9月~2007年1月のイメージ増減


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調査結果3
キャリア変更意向のある人が新聞広告への反応数が多い

次に、新聞広告のキャリア変更意向消滅に対する効果を分析した。その結果、キャリア変更意向のある人のほうがない人より新聞広告への反応数が多く、キャリア変更を思いとどまった人は「新機種の告知」や「料金サービス」といった告知に反応していることが分かった。

2006年12月に読売新聞に掲載された7広告について、見た記憶があるかどうかを聞いた結果を、タイプ別に集計した。「確かに見た」もしくは「見たような気がする」を合わせた接触回数(図15)は、ドコモユーザー全体では平均2.63回。キャリア変更意向がない人より意向がある人の方が多く、①変更意向維持2.87回②変更意向消滅2.61回③もともとなし2.41回となった。

図15:ドコモユーザーの2006年12月のドコモ新聞広告接触回数


ではどんな広告がよく見られたのだろうか。このデータは2007年1月中旬の調査時に、7つの広告をまとめて調査した。読売新聞で通常掲載日とその翌日に行っている広告効果調査とは異なり、また掲載日からのタイムラグもまちまちになっている。

ドコモユーザーの広告記憶状況

図16:「国際サービス」


図17:「ネットワーク品質」


図18:「ファミリー割引」


図19:「903i」


図20:「M702i」


図21:「ユネスコキッズ」


図22:「らくらくホン」


「変更意向維持」と「変更意向消滅」が、「もともとなし」より接触が高めなのが共通しているが、細かく見ると、新機種の告知(903i、M702i)とファミリー割引は「維持」より「消滅」者のほうが高い。魅力的な新機種や割引サービスを改めて告知することが、キャリアを変えようかどうか揺れていた心を思いとどまらせたのではないだろうか。

広告については、新聞以外の広告の接触状況も聞いた(表2)。7広告平均で、ユーザータイプ別に見ると、「もともとなし」より変更意向のある人の方が、新聞広告のみの単媒体接触が少なく、新聞+他の媒体とクロスして接触している人の割合が多い。キャリアを変更しようかと考えている人は、新聞だけではなくいろいろな媒体の広告に敏感になっており、結果的にクロスメディア接触となっていると考えられる。

表2:広告接触パターン(7広告平均)


(国友)

【調査概要】

* 調査期間:
[1]2006年9月29日~10月1日
[2]2006年10月30日~10月31日
[3]2006年11月29日~11月30日
[4]2007年1月13日~1月14日
[5]([1]の調査対象者への追跡調査)2007年1月13日~1月14日
* 調査地域:首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)
* 調査対象者:男女15~59歳(読売新聞購読者)(マーシュリサーチモニター)
* 調査数:[1]~[4]各300、[5]236
* 調査方法:Webアンケート調査
* 調査企画・設計:読売新聞東京本社広告局
* レターヘッド:マーシュ
* 実査:MRD
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