研究レポート
新聞・テレビのクロスメディアがOSのブランド認知やイメージ向上に力を発揮
商品ジャンル別クロスメディア効果調査③

マイクロソフトは2007年1月30日、新しいパソコン用基本ソフト(OS)「Windows Vista(ウィンドウズビスタ)」を発売した。発売に当たってのマーケティングコミュニケーションとして、発売当日を中心に掲載された新聞広告のほか、発売前のテレビCMによるカウントダウンなどさまざまなメディアを使ったクロスメディア展開が行われた。 今回は読売新聞が行った「クロスメディア効果調査」から、広告接触がもたらす「ウィンドウズビスタ」のブランド認知やイメージへの効果を分析する。

監修者・嶋村先生のコメント

監修者・広瀬先生のコメント
調査結果1
広告接触とWebへの誘導にはタイムラグがある

「クロスメディア効果調査」は、調査対象者に日記式の調査票を配り、広告を見て記憶した企業名とブランド、それを見た広告媒体を記入してもらう調査方法をとっている。今回の調査では、パソコン、パソコンソフト・OS、ビールなど商品ジャンルを指定した。複数のジャンルを指定することで、調査対象者の意識がビスタだけに行かないようにし、より平常時の広告接触に近い状況での調査をめざしている。
日記式調査に書かれた件数が「インパクト・スコア」。消費者に企業・ブランド名まで記憶に残すほどインパクトを与えることができた広告接触という意味である。また、日記式調査の前後には事前・事後調査を行い、ブランドに対する認知やイメージを調査した。
広告接触の回数を重ねることが、マインドシェアの向上やWebへの誘導に力を発揮することを示す調査結果となった。特に新聞やテレビのマス広告を含んだ広告接触が力を発揮している。また、広告接触とWebへの誘導にはタイムラグがあり、広告接触経験がある程度蓄積してはじめてWebへ、ということが分かった。

図1は、日記式調査による「ビスタ」の日別インパクト・スコア。棒グラフがインパクト・スコアで、ビスタの発売日である2007年1月30日が329ポイントともっとも高いスコアとなっている。

媒体別に見ると、テレビが8日間計で675ポイントと最も高く、新聞本紙317ポイント、新聞チラシ235ポイントが続いている。テレビは日によるかたよりがなくコンスタントであるのに対し、新聞は掲載日を反映したメリハリのある表れ方になっている。

新聞関連では、1月30日に3ページ連続広告(うち1ページはNECとのタイアップ)、31日にはメーカータイアップのビスタ企画広告、2月3日には別刷り広告特集が発行されており、それがスコアに表れている。

折れ線グラフは、Webで調べた割合である。調査手法としては、「ビスタ」の広告に接触して日記に記したもの(=インパクト・スコア)のうち、Webで調べたものをチェックしてもらった。調べた件数が多いのは、1月30日19件、続いて2月1日17件だが、インパクト・スコアの件数は1月30日329ポイント、2月1日170ポイントと倍近い差があるので、インパクト・スコアに占めるWebで調べた割合で見ると、2月1日の方が高くなる。

図1:ビスタの日別インパクト・スコア(日記式調査)

これは、広告接触とWebへの誘導にはタイムラグがあるということを示していると考えられないだろうか。広告接触経験がある程度蓄積してはじめてWebで調べるという行為が生まれるのではないかということだ。そのタイムラグは今回の調査では2日だった。

この「日記式調査」は、覚えている広告を日記に書き込むという行為が広告接触を復習することになり、広告効果が強めに出る傾向がある。そのため、このタイムラグの2日も短めに出ている可能性がある。

図2は、3月はじめ、つまり日記式調査から1か月後に行った事後調査で聞いた、1月30日掲載の新聞広告の記憶状況。インパクト・スコアが高いほど見た人の割合が高まっているが、特に「確かに見た」が増えていることに注目していただきたい。いろいろな媒体でビスタの広告に繰り返し接触することが、新聞広告の効果を高めている、つまりクロスメディア効果だと言える。

図2:インパクト・スコア数別 新聞広告閲覧記憶
(2007年1月30日付:事後調査)

図3は、事前と事後調査でのビスタ自体の認知である。1月上旬の事前調査の時点でビスタを知っていたのは半数だった。3月上旬の事後調査では94.2%で、発売とそれにかかわるキャンペーンを経て認知が行き届いたことがわかる。

図3:ビスタ認知状況(事前・事後調査)

図4は事前調査、事後調査において「パソコンソフト、OSといって思い浮かぶもの」を純粋想起で書いてもらった結果、「ビスタ」と書いた人の割合である。何も見ないで答えることで、消費者の心の中でビスタがどの程度のシェアを得ているか(=マインドシェア)が分かる。ビスタのマインドシェアは、事前 8.6%から事後65.0%へと増加した。

また男女別に見ると、事前では男性の方が高かったが、事後では女性の方が高めになっている。この間に行われた広告キャンペーンや報道などがより効果を発揮したのは、男性より女性だったといえるだろう。

図4:ビスタのマインドシェア(事前・事後調査)

▲ページの上に戻る
調査結果2
インパクト・スコアがマインドシェアに作用

次に、インパクト・スコアがもたらす作用として、マインドシェア、Webへの誘導やイメージへの影響について分析する。インパクト・スコアは、これらについても大きな影響を与えている。

図5は、インパクト・スコアのポイント別にマインドシェアを見たものである。全体では65.5%だが、ポイント別に見ると大きな差が出ている。インパクト・スコアがゼロ、つまり日記式調査で一度も「ビスタ」と書かなかった人では、12.0%しかない。

ポイントが増えるにしたがって上昇し、7ポイント以上で9割に近づいている。日記式調査の8日間に7回以上ビスタの広告に接触した人ではほとんどの人の意識にビスタというブランドが刻まれたということになる。

図5:ビスタのマインドシェア/インパクト・スコア数別(事後調査)

図6は、接触した媒体のパターン別に見たビスタのマインドシェアである。新聞とテレビのパターンで見ると、新聞とテレビ両方でビスタの広告に接した人でのマインドシェアが最も高くなっていることが分かる。

また、Webで調べた人のマインドシェアは総じて高いが、その中でWebの広告で見てWebで調べたというWeb完結型の人よりも、新聞もしくはテレビを見てWebで調べたというマス広告からのWeb誘導型の方が高い。

図6:ビスタのマインドシェア/接触パターン別(事後調査)

事前・事後調査で、ビスタについてWebで調べたと答えた割合が図7。女性も事前ではゼロだったものが事後5.8%となっているが、男性はより上昇が大きく、事前10.7%が事後27.7%と3割近くなっている。

図7:ビスタをWebで調べた割合(事前・事後調査)

インパクト・スコア別に見ると(図8)、スコアが高い人ほどWebで調べる率が上昇している。特に11ポイント以上で倍増しており、Webで調べるという行為が実現するまでには、広告接触を重ねて発火点を通過することが必要なのかもしれない。

図8:ビスタをWebで調べた割合/インパクト・スコア数別(事後調査)

また、前項のマインドシェアでは、インパクト・スコアが女性に作用したが、Webで調べる、というポイントに作用したのは男性だったのは興味深い。OSという、一般的には男性の方が得意とする商品だけに、広告キャンペーンがもたらした効果は、女性はまず認知してマインドシェアを獲得する、というAISAS (消費行動のプロセス)でいうとAttention(注意)とInterest(興味)の部分であったのに対し、男性はSerch(検索)の部分だったということであろう。

ビスタのイメージについて29項目のキーワードで調べた。図9はインパクト・スコア別に見たもの。スコア別に3区分して、それぞれの層で全体を上回る項目を抜き出したのが図10。スコアが高い人ほどいろいろな項目でイメージが高まっていることが分かる。

図9:ビスタのイメージ/インパクト・スコア数別(事後調査)

図10:ビスタのイメージ/インパクト・スコア数別の高スコア項目(事後調査)

よみラボでは今後も引き続き、読売新聞の「クロスメディア効果調査」から、さまざまな事例の分析結果をご紹介していく予定である。

(国友)

【調査概要】

* 調査方法:質問紙郵送法
* 調査対象者:MRD消費者モニターよりスクリーニングし抽出
(東京50km圏居住者、20代~50代の男女)
* 調査期間:
 事前調査   2006年12月25日~2007年1月16日
 日記式調査   2007年1月27日~2月3日
 事後調査   2007年3月3日~10日
* サンプル数:240人
* 調査企画・設計:読売新聞東京本社広告局
* レターヘッド・実査:MRD