広告が企業ブランドのマインドシェアを上げる
企業イメージ調査「マインドシェアランキング」データの分析から
読売新聞は2006年7月から「純粋想起による企業イメージ調査」(マインドシェアランキング)を行っている。今回、2007年10月までの9回の調査で集められたイメージ項目を統合し、企業イメージがどのような要素で構成され、またどの要素が効果的であるかを分析した。
基本的に企業イメージは4つの要素から成り立っているが、今回の分析で、マインドシェアを上昇させるには広告の力が大きいことがわかった。
もちろん、企業の実力の裏付けや、特定のファン層を作ることも大切であり、その結果マインドシェアが上がることもあらわれた。
分析方法
企業イメージ調査「マインドシェアランキング」とは
消費者の心の中でどの程度好ましい地位を得ているか=「マインドシェア」という。これが高いブランドほど、消費者に対するアドバンテージを持つことから、「マインドシェア」は、企業や商品・サービスのブランド力を測る指標として重視されている。
よみラボでは、「マインドシェアランキング」(純粋想起による企業イメージ調査)を2006年7月から行っている。この調査では「親しみやすい」「社会に貢献している」などのキーワードを提示して、思い浮かぶ企業名を自由に答えてもらう「純粋想起」の手法をとっている。
一般的なイメージ調査では、企業名や商品名をリストに連ね、それを見ながら認知やイメージについてたずねることが多い。しかし、実際の消費現場では競合ブランドすべてがリスト化されて平等に提示されているわけではないため、「純粋想起」という手法で実施するイメージ調査は、消費者の頭の中(マインド)の自然な状態をより正確に知ることができる手法といえるだろう。
また、マインドシェアの中でも、最初に回答されたものは「トップオブマインド」と呼び、より強いイメージが持たれていることを意味している。そこで、我々のマインドシェアランキングでは、トップオブマインドのデータも併せて分析している。
マインドシェアランキングは、調査対象者に名前を思い浮かべてもらえないと得票できないハードルの高い企業イメージ調査である。ただ「知っている」というだけでなく、「思い浮かべてもらえる」まで企業イメージ力を高めるための鍵はどこにあるのだろうか。
マインドシェアランキングでは、通常、キーワード(イメージ項目)ごとのランキングを発表している(
ランキング例はこちら)。今回は2006年7月から2007年10月までの9回の調査結果(イメージ項目27個分のデータ)を統合して、「純粋想起による企業イメージ」の高い企業が主にどのような要素で構成されているか、またどの要素がマインドシェアを高めるのに効果的か、という2つの視点で分析する。
27のイメージ項目は次の通り。
27項目それぞれの得票合計による総合ランキングトップ10は下図のとおり。
図1 27項目得票合計ランキングトップ10

27のイメージ項目のほとんどすべてでトップを取っている「トヨタ」が総合で1位となっており、企業ブランドの強さは際立っている。続いて、「ソニー」「キヤノン」「シャープ」「松下電器」が続いている。
なお、この調査では回答内容にできるだけ忠実に集計するという方針をとっており、5位の「松下電器」は、商品ブランド名である「ナショナル」(20位)、「パナソニック」(32位)に票が分かれている。
データ分析1
高い企業イメージはどんな要素(イメージ項目)で構成されているか
「企業力・安定・社会貢献・尊敬」「独自性・革新力・成長力」「広告力・さわやか・親近感」
上位198社(得票数40以上)の得票合計数と順位を用いて因子分析を行った。
似たような企業名が想起されるイメージ項目はどれとどれか、項目同士の関連性を見るのが目的である。
図2 因子分析結果

因子ごとに整理すると、次のようになる。
図3 3因子の内訳

第1因子を「企業力・安定・社会貢献・尊敬」、第2因子を「独自性・革新力・成長力」、第3因子を「広告力・さわやか・親近感」と名づけた。
言い換えると、企業イメージを測定した27項目を大きく3つの要素に分類したということで、それぞれ「社会的な影響力のある安定企業(企業力・安定・社会貢献・尊敬)」「個性的で革新的(=独自性・革新力・成長力)」「広告のイメージがよくて、親しみやすい(広告力・さわやか・親近感)」といった3つの因子グループに分けられた。
27のイメージ項目のうち、「国際化が進んでいる」「優秀な人材が多い」は第1因子、第2因子の両方に入る共通要素となっている。
一方、「文化・スポーツを推進している」というイメージ項目だけは、いずれの因子にも入らなかった。ただし、男女別に分析すると、女性ではどの因子にも入らなかったが、男性では「広告力・さわやか・親近感」因子に入る。今回の結果では男性のみに見られた傾向だが、「文化・スポーツを推進している」とのイメージは、広告力との相関が高いと考えられる。
自分にとって望ましい企業とは
「就職したい・させたい」「株を買ってみたい」は、ほかのイメージ項目に比べて回答者の自己関与度が高い項目である。この2つともが入っている第1因子「企業力・安定・社会貢献・尊敬」には、“自分にとって望ましい”という判断基準が入っていると考えられるだろう。男女別の分析では、これら2項目は女性は第1因子「企業力・安定・社会貢献・尊敬」に、男性では第2因子「独自性・革新力・成長力」に入る。女性は安定企業に期待を寄せ、男性は独自性のある成長企業を望ましいと思っていることがうかがえる。
データ分析2
マインドシェアの上昇にもっとも有効なのは「広告」
次に、3つの因子の影響力を比べてみよう。
以下の3つの観点で、それぞれの影響力を出すための分析を行った。
① マインドシェアの順位
② トップオブマインドの順位
③ トップ率(その企業名回答数のうち第一位回答が占める割合)
それぞれのトップ10企業はこちら。
トップ10企業
スト10には「読売新聞」が入っていましたが、調査対象者が読売新聞の広告モニターというバイアスがかかっているため順位から外しています。
マインドシェアとトップオブマインドは顔ぶれが似ているが、トップ率の企業には特色がある。
具体的には①②③を目的変数、3因子の得点を説明変数とした重回帰分析を行った。
① マインドシェアランキングの順位を上げること(=とにかく思い浮かべてもらう)に影響しているのは
図4

最初に、マインドシェアランキングの順位を上げる要因についてみてみよう。「なるべくたくさんの人に思い浮かべてもらう」ためには、どの因子がどれだけ効いているのか、ということだ。分析結果をみると、第3因子の「広告力・さわやか・親近感」が最も大きく影響していることがわかる。続いて、第1因子「企業力・安定・社会貢献・尊敬」と第2因子「独自性・革新力・活気」が並んでいる。
「広告力・さわやか・親近感」は第3因子であり、企業イメージの構成要素の説明力では第1因子と第2因子に劣っているが、なるべくたくさんの人に思い浮かべてもらう(=マインドシェアを上げる)ためには、3因子中で最も有効であるというのは面白い結果だ。ポテンシャルのある企業でも、広告活動が少なく親しみが薄れてしまうと、思い浮かべることができずマインドシェアが落ちてしまうということだろう。
② トップオブマインドの順位を上げること(=最初に思い浮かべてもらう)に影響しているのは
図5

次は、トップオブマインドの順位を上げる要因だ。最初に思い浮かべてもらうためには何が効いているのか、ということだ。ここでも第3因子「広告力・さわやか・親近感」の影響が最も強い。ただし、①のグラフと比べると、第1因子と第2因子との差が若干縮まっていることがわかる。マインドシェアと同様、トップオブマインドでも「広告力・さわやか・親近感」がもっとも有効だということは変わらないが、「企業力・安定・社会貢献・尊敬」や「独自性・革新力・活気」、つまり企業の実力の裏づけの重要度が増している。
③ トップ率を上げること(=効率よく思い浮かべてもらう)に影響するのは
図6

3つ目に、トップ率(回答数のうち、第一位回答として挙がった割合)アップへの影響度合いを見てみる。効率よく思い浮かべてもらうための要因だ。①②とは傾向が違い、第1~第3の3つの因子「企業力・安定・社会貢献・尊敬」「独自性・革新力・活気」「広告力・さわやか・親近感」がほぼ横一列に並んでおり、いずれもが重要だということになる。
トップ率が高いということは特定のファン層を持っているということを示しており、ニッチなファンを持つ企業はトップ率が高くなる。例えば音楽ファンに強い企業、ゲームファンに強い企業…ということだ。その層が幅広ければトヨタのようにトップオブマインドでもダントツになる。
よみラボの「マインドシェアランキング調査」は今後も2ヶ月に1度のペースで調査を続けていきます。過去に調べたイメージ項目について、2回目の調査を行い、時系列変化を見る分析も始まりました。今後もご注目ください。
(国友)
調査概要
# 調査期間と
回収数(率) : ①2006年7月15日(土)~21日(金)、635(70.6%)
②2006年8月24日(木)~27日(日)、659(73.2%)
③2006年10月23日(月)~26日(木)、656(72.9%)
④2006年12月3日(日)~6日(水)、639(71.0%)
⑤2007年2月7日(水)~11日(日)、642(71.3%)
⑥2007年4月11日(水)~14日(土)、732(71.7%)
⑦2007年6月6日(水)~10日(日)、730(71.6%)
⑧2007年8月1日(水)~4日(土)、733(71.9%)
⑨2007年10月2日(火)~4日(木)、721(70.1%)
# 調査対象者 : インターネットによる読売新聞広告反響調査システム「アドボイス」のモニター(20歳以上、1都3県居住)
# 回答方法 : 1回の調査で3つのキーワードについてそれぞれ思い浮かぶ企業名を純粋想起で最大6社まで回答