ソニー「Creator’s DNA」キャンペーンに見るクロスメディア効果
ソニー「Creator’s DNA」キャンペーンに見るクロスメディア効果



1972年生まれ。97年早稲田大学商学部卒業。2002年同大学大学院博士後期課程修了。早稲田大学産業経営研究所助手、東京富士大学経営学部専任講師を経て、05年より現職。広告論担当。著書に『エッセンスで読むコトラーのマーケティング 入門の入門』(あさ出版)、『新しい広告』(電通、共著)、訳書に『経験価値マーケティング』『経験価値マネジメント』(ダイヤモンド社、共訳)などがある。

 今回の調査は、昨年の10月末から今年の3月までの半年間のキャンペーン訴求について行われています。「Creator's DNA」というキャンペーンのタイトルからもわかるように、デジタルカメラやデジタルビデオというソニーの主力商品を通じて、同社の技術にかける熱い思いを伝えようとしています。特に、先行して出稿された新聞広告では企業の思いが前面に出されており、雑誌と別刷りタブロイドでは新聞広告の内容を裏付けるように商品が中心の広告表現になっています。最近は、新聞折り込みにも従来は見られなかったような再現性の高いものが登場しており、今回の別刷りタブロイドも存在感のある仕上がりになっています。調査結果1では、消費者視点の優れた製品開発の姿勢が対象者に伝わっている様子がよくわかります。

 調査結果2は、各媒体の認知から行動に至るまでのプロセスを示しています。この調査では、広告を見せて思い出せるかどうかで認知を評価していますが、広告を見た覚えがあっても印象に残る、理解できる、興味がわく、情報収集などの行動と購買行動に直結する心理状態になればなるほど、対象が絞られていく様子がわかります。新聞広告や別刷りは幅広いターゲットに訴求できる分、広告を見た全員が広告に興味を持つとは限らないので、認知と印象とのギャップが大きくなっています。反対に、雑誌広告はターゲットが絞られているので、広告の認知率は低くても他の項目とのギャップが新聞広告や別刷りに比べて小さくなっています。

 このことは調査結果3で確認できます。図3は、3つの媒体への接触状況を示したものです。雑誌は新聞や別刷りに比べて広告を見た覚えのある人の割合が少なくなっていますが、これは雑誌の読者層が新聞の読者層よりも限られていることを示しているといえるでしょう。

 興味深いのは、複数媒体への接触と効果です。マインドシェアへの効果では、広告媒体に接触した人とそうでない人との違いはあるものの、接触した媒体の数には大きな違いは見られません。しかし、図4-2に見られるように、購入意向への効果では多くの媒体に接触している方が「そう思う」と答えている人の割合が高くなっていることがわかります。

 この背景には、複数の媒体に接触しているという事実だけでなく、広告出稿のタイミングもあるのではないでしょうか。新聞広告は同社の技術力を訴求するための企業広告的な表現であるのに対して、調査直前に展開された雑誌と別刷りは、技術の裏付けである商品を大きく取り上げています。すべての媒体に接触した人は、ソニーの提供した一連のストーリーに触れ、企業や商品への理解を高めたと見ることもできます。すべての媒体に接触した人たちは、元々、映像機器やソニーに興味のある人だったのかもしれません。彼らの属性やライフスタイルを見ていくと、ソニーのファンやターゲットが明らかにできるのではないでしょうか。

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