ソニー「Creator’s DNA」キャンペーンに見るクロスメディア効果
ソニー「Creator’s DNA」キャンペーンに見るクロスメディア効果



1955年東京都生まれ。78年早稲田大学商学部卒業。88年同大学院商学研究科博士後期過程単位取得。埼玉女子短期大学専任講師、助教授を経て、93年早稲田大学専任講師、95年助教授、2001年より現職。主な著書に、「新しい広告」(電通、監修)、「現代広告論」(有斐閣、共著)、訳書に「経験価値マーケティング」「経験価値マネジメント」(ダイヤモンド社、共訳)などがある。

  ソニーの「Creator's DNA」キャンペーンの新聞広告は、いつものソニーの広告とはちょっとトーンが違っているような印象があります。私の印象では、ソニーの広告というと比較的クールに自社製品の特徴を訴えることが多かったのですが、このキャンペーンは開発者のものづくりに賭ける熱い思いを読み物のような形式で伝えるものになっています。画面がほぼ二分割され、白を背景とした読み物部分と、製品の特徴を浮き彫りにする写真とが効果的に配されています。4回の広告掲載を終えたタイミングで出稿された別刷りタブロイドとDIMEタイアップ広告とあわせて、ソニーの映像機器への印象とクロスメディア効果を探るのが今回の調査です。
 調査結果1(図1)は、調査の設計上、新聞に掲載された4点の広告提示前後で「ソニーのデジタル映像機器の印象」の差を見ています。実際には、すでにこれらの広告を見ている人も、今回初めて見る人もいるのですが、実物を再認する(あるいは初めて見る)ことで印象が変わるかどうかということになります。「伝統ある技術のDNAが受け継がれている」「技術者が魂を込めて作っている」という広告が伝えたかったことはそれぞれポイントを上げ、広告内容が短期的に受け手の印象を変えることがわかります。
 調査結果2(図2)では認知、印象、理解、興味、行動という段階ごとに、本紙掲載の広告、別刷りタブロイド、DIMEタイアップ広告それぞれがどのように効果を発揮したかを示すものです。ところで、ここで使われている段階は、DAGMARやAIDMAとは順番が違うところに注意が必要です。DAGMARなら未知-認知-理解-確信-行動、AIDMAなら注意-興味・関心-欲望-記憶-行動となります。
 認知の直後に印象があり、理解の後に興味があるというのは独特のものですが、ソニーが広告キャンペーンの効果を把握するときにはいつもこの段階を使っているということです。それだけ、広告が与える印象を重視しているということかもしれません。ですが、今回の調査結果では、本紙全面広告と別刷りタブロイドは印象の点で大きな差はなかったようです。
 調査結果3(図3)は、3種類の広告への接触の重複状況を実数で示すめずらしいデータです。本紙全面広告と別刷りタブロイド両方に接触した人が一番大きな集合になっているのは興味深いところで、新聞定期購読者は意外と丹念に新聞本紙や別刷りを見ているようです。DIMEタイアップ広告のみを見たという人はむしろ少数で、当然のようにいくつかのメディアに接している人が多いようです。3種類の広告すべてに接触している人が10%近くあったのも注目されます。
 調査結果4は、「あなたがほしいデジタル映像機器のメーカー」としてソニーを最初に挙がってくる可能性が、接触する媒体が増えるにつれて高まるかどうかということですが、図4-1を見る限り、それほど単純な相関関係はなさそうです。もちろん、まったく広告に接触がない状態と比べれば、一度でも広告に接触することの効果はあります。今回のクロスメディアは新聞本紙、別刷り、雑誌タイアップという活字媒体のみの3種類で、広告のトーンも似通っていたため、2媒体、3媒体と接触してもそれほど大きな効果がなかったのかもしれません。
 一方、図4-2でわかるように接触した媒体が多くなるほど「購入したいと思う」人が増えています。似通った情報でも、何度もたたみかけられることが購入意向に影響する可能性を見ることができます。
 調査結果5は、「この媒体で広告を見た」という記憶と、調査で使った3種類の広告との実際の接触とを比較するための試みです。広告を見た記憶だけをたずねると、テレビでという人が7割近く、圧倒的に多いことがわかります。ただし、いつからいつまでの広告が記憶に残っているのかを限定していないので、相当前の広告の場合もあるでしょうし、同じ商品の広告とは限りません。
 図5-2は、回答者を今回の調査の接触媒体数でグループ分けして、各グループの人たちがソニーの広告をどの媒体で見た記憶があるか(複数回答)を示しています。たしかに、3媒体ともに接触したグループと、1媒体、あるいはまったく接触していないグループとでは、違いがあるように見えます。「広告を見た記憶がある」場合、「多分テレビで見たはずだ」と考える人が多いのではないかという仮説は立てられそうです。このあたりはさらにデータを蓄積していく必要がありそうに思います。

▲ページの上に戻る